幸せが会社の業績を高める(人を大切にする経営学会第5回全国大会2日目)

人を大切にする経営学会 第5回全国大会 2日目も慶応大学で興味深い研究発表でした。特に幸せが企業業績を高めるために一つの要素だと強く感じた一日でした。

①【人を大切にする会社と子供の数の研究】

~なぜこの会社は社員の子供の数が多いのか~

人を大切にする経営人財塾生 株式会社 さくら住宅 小林久祉氏

 

人を大切にする経営を実践している会社は子供の数も多いとの仮説を調査研究。

人を大切にする経営人財塾での年間調査を全国50社の企業に実施している。

このテーマを実証することで日本が勝欠ける3大問題は人を大切にする経営が解決する。

・財政問題(赤字企業の黒字化による納税額の増加)

・地方の衰退(地域においての良質な雇用の増加)

・少子化(少子化に歯止めがかかる)

 

 

現在全国の対象企業に塾生が出産・育児についてそれぞれの支援施策をヒアリングしている。

■出産や育児を支援するための経営面や福利厚生面からの施策や工夫40項目

・ノルマを課さない、ノー残業デーなど

・有給休暇の取得の奨励

・社員が夢を描ける長期ビジョンの作成を制度化

・短期時間勤務制がある など40項目のチェック項目

※社内の子供がいる社員の世帯のこどもの平均=

子供のいる社員の世帯の子供の総数÷子供のいる社員の世帯数 でそれぞれ試算

ちなみに我が社はこの試算ですと7世帯あり15人子供がいますので平均2.1人でした。

 

【事例発表】

三和建設 株式会社

日本でいちばん大切にしたい会社大賞受賞企業

・平均=2.04人

・リストラしない

・家族を招待してのパーティ

・従業員の配偶者の誕生日には花を贈る

・2018年新卒社員の専用の寮を新設

・企業内保育園の運営(社員は無料)

⇒個々へのきめ細かい配慮・対応が重要。個別アンケには柔軟に対応し仕組化している。

 

3月には研究報告をまとめて出版を計画している。

②【社員意識調査「良い会社サーベイ」回答データ分析】

良い会社で働く幸せと社員の就業継続意思との関連性の考察

株式会社パソナ パソナキャリアカンパニー 關口 洸介氏

 

良い会社=かかわるすべての人が幸せになる会社

「働き続けたいと思う社員が多い」とその他の項目についても良い結果がでる傾向にある。

 

・信頼できる経営陣の下で働きたいかどうかが大きな差が出る。

 

■変わるべきは、社員か経営者か

経営者が変わらなければ社員は変わらない

社員は経営者の背中を見ている

3万件以上のデータからは

「社員の経営に対する信任があるからこそ自律的な行動に繋がっていく。」ことが分かった。

■制度が先か、風土が先か

制度より風土、信頼関係がまず先にたつ

制度を改定させて悪化してしまった会社。制度だけではだめで信頼関係や信任を作っていかないといけない。

他社と比較で高い 偏差値 低く出る項目 給与、評価については低く出る傾向があるので注意が必要。単に給与を上げれば満足度が上がるわけではない。

 

■働き方改革で幸せに働く人が増えるのか

労働時間削減・残業時間の削減はあくまでも手段

働く人の幸せを目的とした、真の働き方改革を

労働時間は働く幸せに直接的には相関が無い。むしろ、一人一人の働く幸せが向上を目指すべき

経営のあり方が変わらないと 社員の幸せにはつながらない

働き方改革で本当に幸せに働く人は増えるのか社員がどうすれば幸せに働けるのか。それを一緒に作っていくのが重要。

・組織には下から目線も大切である。

 

・全ての人は幸福を求める。そこに例外はない。考えられる手段を様々用いて、人はこの目的を達成しようとする。幸福こそがすべての人の行動の動機となっている。ある人を戦争に活かせるのも。

③【大企業の幸福経営~ジレンマと今後の取組~】

 

人を大切にする経営人財塾生

パナソニックの元代表取締役専務

創援株式会社         榎戸康二氏

 

■大企業の抱える課題

リストラ

心の病を持った社員

不正を起こした社員の解雇

相見積もり(取引先はコスト)

3月までパナソニックの役員をされていた榎戸さんの発表はなまなましくも説得力のある素晴らしい内容でした。

・ベースには社会の公器の我が社が倒産したらどうするという考え方からやらざるを得ないというプロセス

・また、多くの会社で起こる不祥事について多くの社員は自分の懐をよくするためには不正はしない。業績を高めるためにやる。

 

かつて創業者松下幸之助は下請け会社のことを共栄会社とよんだ

 

■大企業の経営会議は・・・

今期、来期の業績

事業戦略:集中と選択

リスク管理:会社のリスク管理の一環で働き方改革をやっている

「これが上場会社として社会の公器としての常識である。」に陥る。

 

■上場とは会社が創業家から一般社会のものになること

目的:信用と資金調達力を高める

プロセス:社内管理体制の整備・審査継続的監査

効用:信用と資金調達力の向上 経営の見えるか

弊害:管理組織の肥大化、官僚化、監査、株主への対応時間増加

業績:目的化

集中と選択:リストラ

リスク管理:社員が犠牲

多くはこのプロセスで創業社長ですらも考えが変わってきてしまう。

コーポレートガバナンスコード2015年

「企業の思想や考え方に賛同した人がその会社の商品を購入するようになっている。」

 

■周回遅れの上場企業経営

集中と選択は時代遅れである。大企業の幹部に言うと殴られる。業績を目的にした集中と選択は時代から取り残される。プロ経営者は「経営ごっこ」のプロ

集中と選択は時代遅れ

業績を目的とした選択と集中は時代遅れ。

 

■提案

・経営者を評価する仕組みを構築すること

・業績ではない通信簿を作り変えないといけない

・大企業の経営者が本来信じている正しい経営を安心して出来る仕組みを

・社員の生活の安定と人間的成長を提供する場としての企業戦略を練り直すこと。

・ルールは手段であり、目的ではない。手段が目的化してはいかない経営を。

・人を大切にする経営は大企業でも必ず実現できる。人の幸せを経営戦略の中心に据え実践すること。

 

④【特別講義2】

人を大切にする経営は世界にも通用できる:タイの事例から

元国費留学生、チュラロンコン大学 商・会計学部

ポンタナラート・クリティニー講師

 

■タイ社会は人を大切にする経営に不向き?

経営理念は概念が無い。

WEBサイトの飾りのようなもの。

ビジョン、ミッションなどアメリカ流のスタイルが浸透している。

いかに利益を上げるかをやっていく。

短期的に転職を繰り返し、繰り返すほど賃金も上がっていく。

社員教育は損という概念が一般的

低い失業率と人手不足が続く

政治的混乱

しかし、調査研究からタイにも人を大切にする企業が存在していることがわかってきた。

(タイをよりよい国にと伊那食品工業はじめとした日本の中小企業をモデルにタイの経営者育成を志している。ちなみにチュラロンコン大学はタイの東大と言われる大学です。)

■サイアム・ハンズ(すいか)

:アパレル会社

 

・タイムカードが無い

・荷物検査がない

・名刺 ベルタイマーがない

・人間尊重

・就業時間を決めない

・目標管理はチームのミーティングで決める

・社員に2Tと言って、金への投資と土地への投資を奨励している。基礎教育を受けていない社員も多いためギャンブルやお酒にお金をつぎ込んでしまう社員がいることから蓄財や人生設計も教育している。

・食事は3食1か月600円で食べられる。平均給与6万円、社員が一生懸命働いて家族の弁当も持って帰れる。

キーワードは:あなたはお母さんを愛しているか?親を愛している社員は良い社員になる。

 

⇒クリティニー先生の話は衝撃でした。すいかの事例はタイムカードが無い、人間尊重は 出光創業者の出光佐三の経営をモデルにしていそうな気がします。奥の海外企業がかつての日本的経営をモデルに成長する企業が増えていることに日本人として誇らしいとともに危機感を覚えます。

 

  • 【全体を踏まえての感想】

今回人を大切にする経営と「幸せ」というキーワードがとてもしっくりきた全国大会になったと思います。働き方改革は一人一人の幸福度を上げていくための活動ということがすべての発表者の共通な答えになっていました。また、幸せをキーワードに飛び交っていたために会場には良い雰囲気に包まれて進んでいました。幸せになりたくない人はいないという当たり前のことを前提に企業経営を行えばもっと楽に運営を行っていけるのではないかと私なりに感じた次第です。

        慶應大学大学院の前野教授(幸福学の研究で有名)

今回多くの方が発表された幸福度を踏まえた研究はこれから多くの企業で、取り入れられるとともに日本の会社を変える大きなきっかけになりそうな気が強くいたしました。中でも慶應大学の前野教授の幸せの4つの因子、1、「やってみよう」因子、2、「ありがとう」因子、3、「あなたらしく」因子、4、「なんとかなる」因子)の視点では分かりやすくすぐに取り組める幸福学でした。すぐに取り組めます。有意義な2日間でありました。明日からまた頑張ります!