経営者よポストコロナに備えよ!

この寄稿を執筆している3月28日現在、小中学校の休校が1か月続き、イベントや会合は中止が相次ぎ、首都東京はロックアウトの危機が日に日に高まってきております。経済活動は停滞し社会全体がこれまで経験したことのない未知の状況に置かれ始めています。弊社にも「事業の見通しが立たない」「今後が不安、会社を早期に売却できないか」と経営者からの相談が数多く寄せられています。政府の緊急融資制度などにより当面の資金確保は可能であってもその後の事業運営をどのように行えばよいのか見通しが立たない状況です。しかし、この1か月で確実に起こりうることもはっきりとしています。いつかはこの状況も終わりを告げます。今回はこの状況が落ちついた後の時期を見据えポストコロナをテーマに述べていきます。

◇対応できない企業は退出せざるを得ない

今回の新型コロナの影響で近々に廃業してしまう企業は、新型コロナの影響がなくとも今後10年間で廃業することになる企業です。廃業予備軍とも言える企業の淘汰が一気に短期間で進むことになるでしょう。ここまでは折り込めますが、この状況が長く続くと本来残るべき企業も一緒に淘汰が進んでしまう可能性があります。多くの企業において外注先、取引先の廃業により業務に支障がでるようになってきます。そのためにも、企業は当面の資金確保ができた段階でアフター新型コロナ後の事業構想を練る必要があるでしょう。その取組として挙げられるのが外注先など取引企業のM&Aです。外注先から「来月で事業所を閉めることになりました」との相談が来た際、自社の展開において必要な領域であれば迅速に「社員と取引先を引き継ぎます」と言えるような判断ができるように準備をしておくことが必要です。

◇既存のビジネスモデルは多くが崩壊する

しかしながら、アフター新型コロナの世界ではこれまでの事業のやり方は大きく変わってきます。今回の騒動で大きく我々の生活を変える出来事は「人との接触を必要としない生活」です。この新型コロナの影響下でニーズが増えているものはEC、宅配、キャッシュレス、オンライン教育などリアルな接触をしなくてもよいサービスです。この状況はアフターコロナ後も続きます。既存のサプライチェーンや商流は大きく変わらざるを得ないでしょう。この影響下でデジタル化を果たした企業はこれまでの企業にとって代わるようになるでしょう。建設業、製造業、卸売業、小売業など業種を問わず旧態依然としたビジネスモデルに固執する会社はことごとく危機に見舞われていくでしょう。

◇デジタル化を加速させる

新型コロナが収束してもコロナ以前の経済環境が戻るのかというとそれは決して戻ることはないと言えるでしょう。その理由がDX(デジタルトランスフォーメーション)です。アフターコロナ事業のやり方は大きく変わります。半強制的に一気に広がったテレワーク、Eコマースなどの流れはさらに加速することになるでしょう。これまでの概念を破壊して新しい秩序が形成されていきます。働き方についてもさらに副業やフリーランスなどが増加して組織というよりチームで価値を創造していく時代になっていきます。どの会社も自社を見つめなおしデジタル対応を図って行かないと明日はありません。弊社においても2月の末から15名の社員でテレワークを一気に導入いたしましたが、生産性も下がらず、何の問題もなく、むしろ学校や幼稚園が休止されるなか全社員が勤務を継続できました。

◇経営者、経営幹部の若返りが必須

デジタル化を果たしながら新しい事業モデルに転換していくためには、経営者、経営幹部の若返りがポイントです。後継者、経営幹部がいる会社は今回の新型コロナの影響を機に一気に若返りを図ることをお勧めいたします。世の中はこれまでにない変化の時代を迎えます。若い社員がいない会社はこの流れについていけない状況になります。ドラスティックに若手を登用し、彼ら、彼女たちに会社の将来を託すようなプロジェクトを任せてみることが重要です。いつの時代も歴史を見れば若者が未来を切り開いてきました。

◇原理原則に則りアフター新型コロナを描く

最後にこのような時ほど原理原則に沿ってテクニカル論に流されないことが重要です。どちらにせよ今回新型コロナによって迫られる変化は、中長期的には日本のすべての企業が対応しなければいけない課題を突き付けてくれています。このような急激な変化の時ほど、長期を図り理念や社員第一主義を掲げて判断をしていくことが経営者には求められます。結論からすればデジタル化、M&Aその体制を整備するための社内システムの構築や人材育成がこの1年間にどの企業においても最も力を入れる必要のある取組です。これらの取組を行いながらアフター新型コロナを描くことが今後20年の事業の基盤を作る大きなチャンスになるのです。

「朝が来ない夜はない」の言葉どおり、半年から1年以内に必ずこの状況も新たな形になるにせよ落ち着きます。企業経営者にとってはその時が反転攻勢の時です。その際に事業モデルや働き方を万全にして次の商機をつかんでいくことが経営者には何より求められます。後世の人々があの時が転換点だったという時期に我々は生きて、企業活動をおこなっているという自覚を持ち前向きに進んでいきましょう。